突然死とその予防2008/08/12 12:47:18

60代の男性。某医で高血圧で服薬。不整脈の既往歴あるも特に治療はしていない。少し太り気味。某病院の人間ドックを2回うけて、特に異常なく、脈波検査でCAVIが正常範囲を超えていた(動脈硬化があるということ)。何を思ったかその町にできた新しい健康スポーツクラブに加入した。ある日そのスポーツクラブで軽い運動後、気分不良となり、トイレにはいった。そのままでてこなかったので、施設側であけたところ意識不明で倒れていた。AEDで処置し、救急室にて蘇生をおこなったが回復せず、死亡した。死亡後の頭部CTには異常なかった。不整脈による急性心不全と診断された。

この方は日頃病院へかよい、ドックも受け、長生きしたかったのでしょう。運動がいちばんよいと聞いてスポーツクラブにはいった。その直後の心臓発作だったのでしょうが、救う道はなかったのでしょうか?無症状でドックでもひっかかっておらず、ホルター心電図などのもっと精密な検査は受けるチャンスはなかったでしょう。開業医での薬も適切ですし、CAVIが高かったので、EPAをのませてあげる可能性はあったでしょう。まだ普及していないと思いますが、この魚の脂はものすごくききます。想像するに10年前からEPAを飲んでいれば、こんな目に遭わずにすんだものと思います。ドック受診時から飲んでいてもその日の発作はなかったと思います。それほどEPAの効果はすぐれたものと思っています。

きょうは文献の抄読ではありませんが、医学研究の論文はみな人の命を、あらゆる次元で助けるのが目的ですから、重要な経験と思いここに記しておきます。EPAはもっと普及してよい薬でしょう。文献も多数あります。

TDP-43と筋萎縮性側索硬化症2008/07/21 18:03:40

ALSを発生する新しい遺伝子の発見は、過去のねずみの研究を無に帰し、世の中は真っ青になって、TDP-43蛋白について研究を進めているはずだ。ほんのちょっとまえの研究なんてそれはいったい何だったのという状況ではないでしょうか。今はあらゆる手持ちの技術でTDP-43を追いかけていることでしょう。この発見には地道な日本を含む病理学者の剖検の積み重ねによるところが大きい。前頭側頭痴呆の自験例がほしいなと思いながら、わたしは症例をみていましたが、目の前にいました。ほんとうに驚きです。この驚きは職場を変わらなければ経験できなかったことです。SOD遺伝子が関係するのはALS全体のたかだか2%ですが、大部分の孤発性ALSの原因究明に大きく近ずいたようです。どうやらALSも運動系だけの病気でなく、脳全体躰全体の病気と考えていいのではないでしょうか。

Black dots2008/05/24 19:10:22

Fig.1
Cordonnier C et al: Spontaneous brain microbleeds: sytemic review, subgroup analysis and standards for study design and reporting. Brain 130,1988-2003, 2007

brain microbleeds(BMBs)

結論は
The methodological quality of the lliterature on BMBs is generally poor.
BMBs are more frequent in peaple with cerebrovascular diseases than so-called 'healthy' adults.
BMBs are more frequent in ICH than in ischemic stroke.
The prevalence of BMBs is higher in recurrent than firstever stroke.
hypertension, radiological lacunaes and leucoaraiosis appear to be robust associations with BMBs.
Firm conclusions about the diagnositic utility of BMBs and their influence on prognosis and the effects of treatment are not possible, but these are the major priorities for future studies, which must be well-designed.

過去の無数のBMBの論文をreviewして問題点をあげている。一番感心したのは, Fig.1 であげているblack dotsの定義の問題です。図のAは典型的ですが、後頭葉に普通の出血のあとがあります。BにはおおきなCTで石灰化になるblack dotがあり、CDではまぎらわしい正常で黒くなるglobus pallidusとflow voidをしめしています。cavernous malformation Zabramski type VIも同じような像になります(わたしは大きいのはこっちにはいるとおもいますが、)MRだけでみているので組織証明は困難です。出血梗塞、ラクナ梗塞に伴う出血もblack dotsと同じようにうつります。日常MRをみているものとしては、いくらでもこういう画像をみるわけで、これでその意味をいうには、厖大な症例にfollow upが必要で今の日本の医療環境ではむりでしょう。わたしがみていた症例も散逸してしまった。しかしその経験がいまに生きるわけだが。

Parkinson病22008/05/21 11:54:55

Connie Marras, MD, PhD and Anthony Lang, MD
NEUROLOGY 2008;70:1996-2003
Special Article
Invited Article: Changing concepts in Parkinson disease
Moving beyond the Decade of the Brain

2号続けてParkinsonの特集。
Abstract
Recent years have seen major changes in our understanding of Parkinson disease (PD), challenging conventional wisdom, much of which was established during the Decade of the Brain. In this article, we highlight important changes in our understanding of PD in six general categories: definition, etiology, pathology, pathogenesis, clinical features, and therapeutics.

今回順番がParkinsonの番になって学習しているだけですが、教科書を完全にかきかえないといけない状況になっています。特にParkinsonになっていない段階のParkinsonがいるというのは驚きです。完成したParkinsonを多くみる機会がありますが、ただ消耗しているわけではないのですね。

パーキンソン病2008/05/18 18:27:06

Heiko Braak, MD and Kelly Del Tredici, MD, PhD
NEUROLOGY 2008;70:1916-1925
Special Articles
Invited Article: Nervous system pathology in sporadic Parkinson disease

Parkinson病で、Braak仮説というのがきわめてhotな話題になっています。これはそのBraak自身によるreview最新版。必読。医学のあゆみの
225巻5号
ここまでわかったパーキンソン病研究
5月第1土曜特集
も購入して参考にしていますが、驚きの記述の山。Acta Neuropathologicaの最新のParkinson特集号をラッキーにもonline版を全部downしてありますが、これがこのBraak仮説の検討でした。全部を熟読するのは時間がかかりそうです。ALSといい、Parkinsonといい、遺伝子でなく病理学から病気の本態へアプローチできるのはすばらしいことです。シヌクレイノパチーsynucleinopathyとよく聞く名前について興味を持って学習していればわかる問題でした。

パーキンソン病も昔習った教科書的記述とはずいぶん違った病気のようです。脳外科のパーキンソンの症状をとる手術、治療がありますが、それはその場限りで病気の進行とは何の関係もない。これも全身病だ。

しばらくお休みでしたが2008/05/08 21:35:46

今年にはいり、この抄読会はお休みでしたが、わたしの抄読会は逆にもりあがり、近年になく多くの文献を読みました。わたしの作品もじつにしばらくぶりに文献となりました。10年前とちがうのは、Internetで多くの文献を大学の図書館にいかないでも、容易にみることができるということです。医療崩壊が進んでいる現在でも多くの学術文献をパソコン画面に向かうだけでとりだせるようになったことは、画期的なことです。わたしが医者になったころにはコピーが普及して文献を図書館で読んで書き写すとい無駄なことがなくなっていましたが、現在はすべてネットからとりだすことが出来て、大学にいなくても相応な知識を得ることが可能になりました。あとは目的とやる気だけです。

Minocycline in ALS2007/11/20 17:31:51

Lancet Neurology 2007; 6:1045-1053


Efficacy of minocycline in patients with amyotrophic lateral sclerosis: a phase III randomised trial

Paul H Gordon MD a , Dan H Moore PhD d, Robert G Miller MD c, Julaine M Florence DPT g, Joseph L Verheijde PhD e, Carolyn Doorish BA a, Joan F Hilton ScD f, G Mark Spitalny MA c, Robert B MacArthur PhD b, Hiroshi Mitsumoto MD a, Hans E Neville MD h, Kevin Boylan MD i, Tahseen Mozaffar MD j, Jerry M Belsh MD k, John Ravits MD l, Richard S Bedlack MD m, Michael C Graves MD n, Leo F McCluskey MD o, Richard J Barohn MD p and Rup Tandan MD q, for the Western ALS Study Group

ミノマイシンは,脳梗塞には有効ですが、ALSには害になるそうです。長期に抗生物質のませたらどうなるかは、やる前からわかりそうなものですが。論文の主旨ははっきりしています。minocycline, phase3, 無効どころか有害だそうです。

ちなみに来年にそなえて、Lancet Neurologyを購読開始しました。21世紀以降、学習したテーマでも結構重要な論文を知っていますので、まずそれをdownいたしました。

脳MRによる無症候性病変2007/11/08 08:25:54

NEJM ,Volume 357:1821-1828 (November 1, 2007 ) Number 18

Incidental Findings on Brain MRI in the General Population
Meike W. Vernooij, M.D., M. Arfan Ikram, M.D., Hervé L. Tanghe, M.D., Arnaud J.P.E. Vincent, M.D., Albert Hofman, M.D., Gabriel P. Krestin, M.D., Wiro J. Niessen, Ph.D., Monique M.B. Breteler, M.D., and Aad van der Lugt, M.D.

2000例のロッテルダム研究の住民に脳MRをしたら、無症候性脳梗塞145(7.2%), 脳動脈瘤1.8%, 脳良性腫瘍1.6%に認め、白質病変の容積をml単位で計測したというわかりやすい内容です。T2* gradient echoもとっているようですが、補足データのなかに出血病変についてはかいていません。英国人には少ないのでしょうか?だれもが日常みているはずの白質病変の量ってこんな表になるものなのでしょうかね。この種の検討はpopulationの選択の仕方で大きく値が異るはずです。脳ドックはやりの日本に客観的なこういった検討がない(少ない)のは残念です。

Minocycline treatment in acute stroke2007/10/06 13:21:30

Minocycline treatment in acute stroke
An open-label, evaluator-blinded study
Y. Lampl, MD, M. Boaz, PhD, R. Gilad, MD, M. Lorberboym, MD, R. Dabby, MD, A. Rapoport, MD, M. Anca-Hershkowitz, MD and M. Sadeh, MD
Neurology 69:1404-1410,2007

ミノマイシン200mg/dayを脳梗塞急性期に経口で5日間投与するとNIH stroke scaleとBarthel indexが改善するとのこと。double blindでないが、77例の検討です。この薬いろいろおもしろい効果があります。

he proposed mechanisms of minocycline include its anti-inflammatory effect, reduction of microglial activation,matrix metalloproteinase reduction, nitric oxide production, and inhibition of apoptotic cell death. A protective effect of minocycline has been demonstrated in spinal cord culture against N-methyl-d-aspartate excitotoxicity. Additionally, minocycline has a significant effect on the apoptotic cell death pathway, including prevention of activated caspase formation. In neonatal stroke, minocycline treatment was found to provide early, but transient protection independent of the mitogen-activated protein kinase p38 pathway.

ALSなど変性疾患にも関係しますが、ミノマイシンを長くのますわけにはいきません。脳梗塞では、軽い炎症のある例に使ってみると有効かもしれません。

Acute ischemic stroke2007/08/11 14:52:27

H. Bart van der Worp, M.D., Ph.D., and Jan van Gijn, F.R.C.P. Acute ischemic stroke (Clinical Practice) . NEJM 357:572-579,2007

62歳の男性が突然、左腕、左脚の脱力を呈し、発語が不明瞭になった。未治療の高血圧を除いて、病歴に特記すべきものはない。患者は現在喫煙しており、45箱/年の喫煙歴がある。発症から1時間15分後の救急部到着時、血圧は180/100 pulse 76で規則的であった。この患者を短時間でどのように評価し、治療すべきであろうか。

3時間以内のTPAの静脈内投与を勧めている。NEJMでもちゃんとlowはでています。本例は首に病変があるのでembolismかもしれません。局所動注も、microcatherterでつっつくのももちろん全然言及してません。
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